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ーーそして死が訪れた。

「なにそれ、それで終わりですか?」
「終わりだよ」
「俺がかわいそうじゃないですか
セックスもしてないのに死体を見つけるなんて」
 反論しようと先生の唇が開きかけたところにキスをする。
「コーヒーのお代わりは?」
「もらおうか」
 今読んでもらっていたのは先生の執筆中の自伝的私小説だ。
つまり僕も出ているけど、初めて家に上げてもらったのは卒業してからだし、先生が患ってるのは痛風だし、元恋人のジムは死んでいないし、チャーリーのすてきな髪はウイッグだ。
 先生の講義はとても魅力的だったけれど、どうも先生に作家としての才能は怪しいものだ。
 それでいい。先生の魅力は僕だけが知っていればいい。ジムもチャーリーもお呼びでないのだ。
「先生」
先生の眼鏡を外しながら目を覗き込む。
「犬、飼いませんか」

ジムが犬を連れていなくなったのは本当だ。

「散歩は君がしなさい」
「一緒に行きましょう、健康のために!簡単に死なれちゃ困るんですよ」
悪戯っぽく笑うと先生が仕方のない奴、というふうに笑う。
 キスが降ってくるので、口を少し開けて誘った。



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