忍者ブログ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

アルセーヌ・ルパン/シャーロックホームズ(小説基準)
ーーーーーーーーーーーーーーーーー




アンデルセンに月が話し掛けた時の様な夜だった。

「ない」
親愛なる助手殿もおらず、特に大きな事件も起きていない。私は暇を持て余して
いた。(もう私のバイオリンのレパートリーは弾き尽くしたし、先日の静養地の土
の分析も済ませてしまったのだ)
こんな時は少々の刺激を接種するに限る、そう思って注射器を探しているのだが
、実験用の引き出しに入れていた一式がなくなっている。いや、なくなっている
と言うのは語弊があるかも知れない。
そこには、注射器ではなくチョコレート、モルヒネの瓶ではなくロリポップがあった
のだ。しかもご丁寧にフランス製。微かに残っているのはあの忌々しい青年の
香りだ。
「こんなものお止めなさいと言ったじゃありませんか」
「君もその盗み癖を直したらどうだね。あと、玄関から入って来たまえ」
そう言って窓を見る。
カーテンと戯れながら窓枠に座っている。月の光で表情は見えないが、その手に
は私のカンフル剤がある、おそらくバラにでも変えられるのだろう。
「今日は何の用だね」
「月の欠片を頂きに」
そうして月の精はやはりバラを持ち、重力から切り離されたように静かに私に近
づいてきた。
「おお、光り輝く天の使いよ、もう一度口を利いてください。」
「ばか」
「はは、先生はこういうのがお好きでしょう?」
まったくそうなのである。現にあんなに欲しかったモルヒネはもういらない。
しかしそうとは言わずに(言ってやるのは癪だし、この嬉しそうな顔!彼には判っ
ているのだ!)腰に回った手をつねってやった。

拍手

PR
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新トラックバック
プロフィール
HN:
ヤスチカ・カッター
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索
最古記事
P R

Template By Emile*Emilie / Material by Auto-Alice
忍者ブログ [PR]