コナマフAU
神父マーフィー/16歳コナーのお話。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「戦地へ行きます」
「そう、終に、」
「きっと前線です。あなたの教えに背いて人を殺すでしょう。行きたくありません。殺したくありません。それに、もう、二度とあなたに、逢えないかも知れない。死にたくない」
最後はもはや聞き取れないほどの呟きになっていた。戦局は厳しく、戦闘は益々激しくなっている。
ああ、神はこんな幼い少年にまで試練を与えたもうのだ、と絶望的に思った。
神職に就いている自分がこんなことを思うのは不敬なのだろうが、恐らくこの少年は試練を乗り越え人間性を高める事はないだろう。
その前にこの子は主の下に召される事になる、そうしてそれを惜しいと思ってしまうのである。
「生まれ変わったら、私たちはもっと近い存在ですよ」
「どういう意味ですか?どうして分かるのですか?生まれ変わりなんて信じてるのですか?もっと近い存在って、何?」
「ふふ、質問ばっかりですね。」
私は目の前の、愛しい少年の髪を撫でる。それは祭壇と同じ濃い金色で、彼が祈りを捧げる姿はひどく美しかった。
「答えてよ!」
「さあ、どうでしょうね」
納得できない顔で私を見る、膨れた頬を緩く撫でる。この子が戦地で安らぎを求めて思い出すのが私であればいいと、願う。
「いつ行くの?」
「もう、行きます。」
決心できなくて今まで言えませんでした、と目を伏せる。
「男爵はご存じ?」
「はい、昨日は食事会を開いて下さいました」
あなたにだけは中々言いだせませんでした、そう言ってはにかむ様子に年甲斐もなく涙がこぼれ、それを見られないよう彼を抱き寄せた。
「気を付けて。主の栄光は君と供にあります。何時も見守ってくれていますよ。」
他に掛けてやる言葉も見つからず、自分より少し背の高い少年に言う。年に比べたら確かに身長は高いが、まだ16なのだ。
一部の人間のように熱狂的に戦地へ送り出せられればよかった。
こんな思いなど、知らなければよかった。
「ファザー、あなたも見守ってくれますか」
「おお、勿論ですとも!いつも君とありますよ、いつも、どんなときも!」
ホザナ、ホザナ!
ーーーーーーーーー
あーあ、俺こんなとこで死ぬのかなあ。ここは何処だっけ!あ、病院か。国に帰りたかったな、村の皆は元気かな?優しい主人だった男爵も?あの人にも会いたかった。
この世の苦難を一身に背負ったみたいな顔したダークブロンドの髪と目のキレイなあの人。お元気ですか?俺はこの生き地獄でまた一つ年をとりました。
俺のことなんかキレイって言ってくれたけど俺はあの人の方がよっぽどキレイだと思う。
それにあの、声!
耳元を銃弾が掠めたときも、ここで友達になった奴の頭が無くなったときも、聞こえていたのははちみつ色の声で最後に掛けてくれた言葉だった。
あの顔に刻まれた皺のひとつひとつに美が集約されているのだ。あんな神職者ずるい。
神様、俺にあの人をください。
俺は輪廻なんか信じちゃいないけれど、あの人はいつだって俺を守ってくださった。なら、次は俺があの人を守る番だ。それなら、それはすごくすてきだと思う。
どこからか歌が聞こえる。
やわらかなランプの光
僕を待つ君の姿が浮かぶようだね
夢に見る君
いとしいリリー・マルレーン
ああ、なんだか眠い。
「アスタ・ラ・ビスタ」さようなら、さようなら。ご縁があればまたお会いしましょう。
さようなら。
神父マーフィー/16歳コナーのお話。
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「戦地へ行きます」
「そう、終に、」
「きっと前線です。あなたの教えに背いて人を殺すでしょう。行きたくありません。殺したくありません。それに、もう、二度とあなたに、逢えないかも知れない。死にたくない」
最後はもはや聞き取れないほどの呟きになっていた。戦局は厳しく、戦闘は益々激しくなっている。
ああ、神はこんな幼い少年にまで試練を与えたもうのだ、と絶望的に思った。
神職に就いている自分がこんなことを思うのは不敬なのだろうが、恐らくこの少年は試練を乗り越え人間性を高める事はないだろう。
その前にこの子は主の下に召される事になる、そうしてそれを惜しいと思ってしまうのである。
「生まれ変わったら、私たちはもっと近い存在ですよ」
「どういう意味ですか?どうして分かるのですか?生まれ変わりなんて信じてるのですか?もっと近い存在って、何?」
「ふふ、質問ばっかりですね。」
私は目の前の、愛しい少年の髪を撫でる。それは祭壇と同じ濃い金色で、彼が祈りを捧げる姿はひどく美しかった。
「答えてよ!」
「さあ、どうでしょうね」
納得できない顔で私を見る、膨れた頬を緩く撫でる。この子が戦地で安らぎを求めて思い出すのが私であればいいと、願う。
「いつ行くの?」
「もう、行きます。」
決心できなくて今まで言えませんでした、と目を伏せる。
「男爵はご存じ?」
「はい、昨日は食事会を開いて下さいました」
あなたにだけは中々言いだせませんでした、そう言ってはにかむ様子に年甲斐もなく涙がこぼれ、それを見られないよう彼を抱き寄せた。
「気を付けて。主の栄光は君と供にあります。何時も見守ってくれていますよ。」
他に掛けてやる言葉も見つからず、自分より少し背の高い少年に言う。年に比べたら確かに身長は高いが、まだ16なのだ。
一部の人間のように熱狂的に戦地へ送り出せられればよかった。
こんな思いなど、知らなければよかった。
「ファザー、あなたも見守ってくれますか」
「おお、勿論ですとも!いつも君とありますよ、いつも、どんなときも!」
ホザナ、ホザナ!
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あーあ、俺こんなとこで死ぬのかなあ。ここは何処だっけ!あ、病院か。国に帰りたかったな、村の皆は元気かな?優しい主人だった男爵も?あの人にも会いたかった。
この世の苦難を一身に背負ったみたいな顔したダークブロンドの髪と目のキレイなあの人。お元気ですか?俺はこの生き地獄でまた一つ年をとりました。
俺のことなんかキレイって言ってくれたけど俺はあの人の方がよっぽどキレイだと思う。
それにあの、声!
耳元を銃弾が掠めたときも、ここで友達になった奴の頭が無くなったときも、聞こえていたのははちみつ色の声で最後に掛けてくれた言葉だった。
あの顔に刻まれた皺のひとつひとつに美が集約されているのだ。あんな神職者ずるい。
神様、俺にあの人をください。
俺は輪廻なんか信じちゃいないけれど、あの人はいつだって俺を守ってくださった。なら、次は俺があの人を守る番だ。それなら、それはすごくすてきだと思う。
どこからか歌が聞こえる。
やわらかなランプの光
僕を待つ君の姿が浮かぶようだね
夢に見る君
いとしいリリー・マルレーン
ああ、なんだか眠い。
「アスタ・ラ・ビスタ」さようなら、さようなら。ご縁があればまたお会いしましょう。
さようなら。
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