コナマフ
モブ視点。お薬のやり取りは適当です。
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なぜ銃口が私を狙っているのだろう。




いつも同じ毎日の繰り返し、強請り 転売 ヤクの買い付け、偽造 ポン引き カジノの運営。
そんな事を繰り返していればボスの座が転がり込んで来るはずだった。何せ私は優秀だったし、黙る事を知っていた。どの世界でも必要なのはそれだ。
ボスになればこの毎日が変わるはずだと思って今日までやって来たのだ。そう、今日まで。
いつもの時間、いつもの場所、いつもの面子、いつもより少し高い値段。簡単な取引だった。
「何キロだ?」
「ロング・トンで300」
「量れ」
いつもの会話。
「5足りません」
そこで私はポリスサービスシックス(私はクラシカルな人間だし、ユーモアのセンスがあるのだ)を取出し、アジア人の左足を撃つ。先月は右足だった。そういった多少の差異はある。
「私は細かい事にこだわる方でね」
そういつもの台詞を言い、5ポンドの隠し場所へ寄ろうとした、その時、機嫌のよさそうな笑い声が響いた。変化はいつも笑い顔でやってくる。
「なんだ、仲間割れじゃねえのかよ?」
誰だ、その基本的な問いを発する前に手負いの売人と三人の部下は赤い液体を撒き散らしていた。怪しまれない様に警備を薄くしていたのが裏目にでた。
なぜ銃口が私を狙っているのだろう。あの暗い穴はいつだって私の味方だったはずなのに。
「あーあ、やりたい放題じゅねえか!悪い子には天罰が下るんだぜ?」
その声に視線をあげると、ひどく美しい青年が二人立っていた。まさかこの二人が私の邪魔を、殺人を犯したのか?
「君たちは、誰だ?」
冷静に、しかも全ての状況を把握しなければならない。
私と青年たちの距離はおよそ50、とても走って逃げられるような間隔ではない。しかもここは絨毯の廃工場である。出口の一つは使い物にならず、もう一つは二人に塞がれている。
八方塞がりか。
「俺たち?そうだな、お前等の好きな言い方をすりゃあ天使だよ」
「天使は人殺しをしない」
冗舌な方に言う。先程から喋っているのはダークブロンドの方だ。間違えるものか、この甘い声は一度聞けば忘れられないだろう。
「何言ってんの?黙示録読んだことねえのかよ?俺たちは主の命があれば裁きを下すんだぜ!はは、跪けよ。おまえらみたいなのが増えすぎた。主もお怒りだ!」
「おい、死人と口聞いてどうすんだ」
初めてハニーブロンドの方が声をだした。二人が向き合う様子は一つの宗教画の様で、私を殺そうとしている相手にもかかわらず見惚れてしまう。
「こんな事をして、何になるんだい?」
時間を稼がなければ。何か突破口を見つけることができるかもしれない。
「誰かが」
コルトガバメントの弾倉を取り替えながらハニーブロンドが言う。
「憎しみの連鎖を断ち切らねばならない。この恐怖と暴力に満ちた世界を。」
「主のために守らん」
そうして哀しげに見下ろされ聞き慣れない祈りを聞いていると、私は腹の底から絶望がふつふつと沸き上がるのを感じた。膝が痛い。
 『魂はひとつにならん』
「暴力を、暴力を以て制するのか」
 『父と子と聖霊の』
彼らがほほえむ姿はまるで天使だった。
 『御名において』
最後に目に映ったのは、私を形成していた血と脳、織りかけで時が止まった絨毯だった。
絨毯には美しい女の人と一角獣。可哀相に、ユニコーン。人なんか一皮剥けば皆同じような汚らしいものなんですよ。

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