むらさきの〜軸のファンアダ短文


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「戦い方が変わったか?それに随分と雰囲気も変わったな」
 常の如く悪魔達を葬り去ったアダムに顔見知りのガーゴイルが話しかける。どういうことか分からないまま黙っていると、そんなアダムを庇う様に黒いマントが翻りガーゴイルとの間に壁を作る。エリックだ。
「アダム、これは敵か?」
「違う……?はずだ」
 二人の会話にガーゴイル達は苦笑する。
「成る程、師ができたのか」
「違う。伴侶だ」
 エリックがガーゴイルの言葉を遮る様に力強く言い切る。
「エリックが言うならそうなんだろう」
「お熱いことで。それよりもお前、お前からは……。両親はいるのか?」
「いない。必要もないしな」
 そう答えるエリックをガーゴイルはまじまじと見つめ、顎に手を当てる。
「お前から同族の匂いが僅かにする。そしてこれは関係のない話かもしれないが──」
 そう言って男は人の姿から本来のガーゴイルの姿になった。その様はエリックの美的感覚で醜い、とされる見目であった。思わずエリックは仮面に手をやる。そしてそのガーゴイルが語るには人間の女に惚れ込んだ同族がおり、勢い余ってか愛し合っていたのかは分からないが禁忌を犯し堕天した者がいると言う。
「……つまりその愚か者が私を作ったと?反吐がでるな」
「まあそう言うな。もしそうならお前の寿命はその他の人間より遥かに長いはずだ。思い当たる節があるんじゃないか?」
 ふむ。そういった様子で二人は考え込む。確かに出逢ってから随分と経ったような気がするのに、エリックの容姿に衰えは見られない。
「正確には分からないけれど、アダムと共に長い時を過ごせるってこと?」
「そうだろうな。まあ悪魔共に殺されなければの話だが」
 ガーゴイル達の会話を聞き、エリックを見つめてアダムが言う。
「今感じているのはお前が教えてくれた歓喜だと思う。抱きしめていいか?」
「勿論だ。我が愛、我が全て」
 気を利かせ、去っていったガーゴイル達のおかげで深い優しく暗い森には抱き合う二人しかいない。アダムのよく鍛えられた肩に顔を埋めたエリックは、アダムに出逢うまで虐み憎んでいた己の疵を祝福だと思ったのであった。


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