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鹿犬
リリー出てきます。
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ああごめんごめんねどうしよう、俺が悪かったよどうしたらいい?君の言うようにするよ!
「だから泣かないで」

抱きしめて俺の指を撫でていう。
俺のくせの強い髪を梳きながら好きだという。
額、目尻、口の端に順にやわらかく口づけて、だから望みを叶えたいのだという。

馬鹿馬鹿しい、お前のそういう甘ったるいところが嫌いだ、と思う。口にはしないけれど。
いやだばかへんたいいっぺんしね、罵倒ならヘラヘラ笑ってなんともないで流せるくせに、きらい、これだけは流せない。らしい。とくに俺の。(これは自負でも高慢でもなんでもなくて、だいたい嬉しくもない、実地に基づいた結論だ)

だがこの忌々しい状況に陥ったのも、元はと言えば俺の弱さが招いたのだ。
あの黄色と赤のタイを結び、妙に甘酸っぱい匂いのするような学園生活で。

どうして泣くのと問われても困るのだ、自分でも訳が分からないのだから。
なにか大きなきっかけがあったわけでもなく、特別な感情の高まりがあったわけでもない。
ああ、強いて言えばここ何ヶ月、何年かの、

「お前、いつになれば俺を許してくれるの」

そう言って見上げた先(きっと俺の顔は茫然としていたことだろう)の男の笑顔は凍り、ひどく傷ついた目の色をしていた。
ざまあみろ、しかしそれでさえ十分ではないのだ、この男が理解したところと、俺たちの意図するところは全く違うのだから。

・・
たちとしたのには大きな理由がある。即ち俺と、リリーだ。

(本当はあなたにする話じゃないんでしょうけれど)
(あなたが一番わかってくれるだろうから)

(許してね)

(ジェームズはなんだって手に入れることができるのよ、望むと望まざると。)
(少し微笑めばいいの)
(そうすれば世界だってその座を明け渡すのよ)
(彼がひどいのは望まざると手に入るってことを知らないから)
(だから彼はあなたやわたしの様にプライドの高い人間が好きなのよ、手に入らなそうだから。)
(リーマスもそうね、あの子は極端に臆病だから、ああ、悪い意味ではないのだけれど)

(わたしがプロポーズされた時なんて言ったと思う?)
(一回目は悪い冗談ね、二回目はごめんなさい、三回目は仕方ないわね考えておくわ、よ)
(最初っから泣きたいくらい嬉しかったのに!)

そう言って俺の前で泣いたリリー、俺は情けないぐらい震える手で彼女の薄くてやわらかい背中をなぜてやるのが精いっぱいだった。


「…そうやって、僕を困らせるところも、愛してるよ」
そう言って泣きそうな顔で笑い、いやに真剣な目で俺を抱きしめるこの男!言うに事欠いて愛してるだと?こいつはどうせ、俺が逃げたいのは今の状況、リリーとジェームズの板挟みからだとでも思っているのだろう。ばかな事を。俺が、俺たちが許されたがっているのは一言、お前がいとも簡単に口にするその一言を言う事だというのに!


(分かるよリリー、だいじょうぶ)

(リリー、リリー泣いていいよ)
(話を聞くだけしかできなくてごめん、ごめんねリリー)




「(お前、逃げ疲れた俺が愛してると、ずっと前から愛してたと言ったら、今みたいに抱きしめたりはしないんだろう?)」


ああ、無闇に大声を上げて、泣きたいような気もする。

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