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アルセーヌ・ルパン/シャーロックホームズ(小説基準)
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アンデルセンに月が話し掛けた時の様な夜だった。

「ない」
親愛なる助手殿もおらず、特に大きな事件も起きていない。私は暇を持て余して
いた。(もう私のバイオリンのレパートリーは弾き尽くしたし、先日の静養地の土
の分析も済ませてしまったのだ)
こんな時は少々の刺激を接種するに限る、そう思って注射器を探しているのだが
、実験用の引き出しに入れていた一式がなくなっている。いや、なくなっている
と言うのは語弊があるかも知れない。
そこには、注射器ではなくチョコレート、モルヒネの瓶ではなくロリポップがあった
のだ。しかもご丁寧にフランス製。微かに残っているのはあの忌々しい青年の
香りだ。
「こんなものお止めなさいと言ったじゃありませんか」
「君もその盗み癖を直したらどうだね。あと、玄関から入って来たまえ」
そう言って窓を見る。
カーテンと戯れながら窓枠に座っている。月の光で表情は見えないが、その手に
は私のカンフル剤がある、おそらくバラにでも変えられるのだろう。
「今日は何の用だね」
「月の欠片を頂きに」
そうして月の精はやはりバラを持ち、重力から切り離されたように静かに私に近
づいてきた。
「おお、光り輝く天の使いよ、もう一度口を利いてください。」
「ばか」
「はは、先生はこういうのがお好きでしょう?」
まったくそうなのである。現にあんなに欲しかったモルヒネはもういらない。
しかしそうとは言わずに(言ってやるのは癪だし、この嬉しそうな顔!彼には判っ
ているのだ!)腰に回った手をつねってやった。

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