コナマフ
病みマフの独白。
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銃口を突きつけられた豚が何かを喚く。聞き取るつもりも無いからか、意味不明の言語に聞こえる。
それに向かってコナーが優しい声で、冷たい目をして話しかける。話しかける?違う、言葉を浴びせかける。本人が聞いていようがいまいが関係ないからだ。
「死は、畏れるべきものではない。なぜなら当人にとってそれは悲劇ではなく終演であるからだ。それが悲劇であるのは遺された者にとってのみであって、お前は何も心配する必要は無い。お前は今から死ぬのだから!」
今日は特に饒舌だ。たぶん俺が怪我したからだな、かすり傷だけれども。
この時のコナーは奇跡だ。端から見てるだけでぞくぞくする。
あの目!
生まれてから一度も向けられたことがないあの氷みたいな目を見ることができる受刑者達に、俺は嫉妬する。
「いつまでさぼってんだ、来いよ」
冷たい声、優しい目。
「やだね」
あの目で見てくれなくちゃ、嫌だ。
「マーフ。」
呆れた声、愛情の籠もった目。
「嫌いになってみてよ」
俺のこと。あの目で見てくれる?銃口を向けてくれる?
「ばか」
苦しそうな顔、苛立った手の動き。
「俺の言うことが聞けねえのかよ?」
情けない事を言うから少し腹が立った。情けねえ声だすんじゃねえよ、俺の好きなのはそんなお前じゃない。ばか。情けねえのは俺だけで十分だ。
「言うことを聞くのが愛なわけ?」
ざまあみろ。ははは。
だからこの涙は嘘なのだ。

(不条理な世界にいるから、失うことが怖いわけです、ユーノウブラザー?愛も、死も。わかるかな。強烈なメランコリック。泣いたってセックスしたって変わらないわけです。俺が女の子ならよかったのかな、兄弟じゃなけりゃよかったのかな。まあこの場合女の子じゃなくてよかったんだけど。確かにセックスの後に空しさはあるけれど仕方ないじゃないか、それしか無いんだから、一つになりたいんだから。あーあ、俺はただもっとプリミティブな、つまり原始的な気持ち、好意、を抱いただけでであってその対象のこの人に勝手に家族だとか性別だとかのオプションがついてきたってだけなのだ。オプションだけは返品できませんか?できませんか。
自己中心的な世界は、自己中心的な俺を許さない。
それなのに、あとからついてきたそれがひどく大きな立ちはだかる、なんて、乗り越えられない障害なのだ。
俺は、ただあんたのことを愛してるだけなのに。
死ぬ時はあんたに殺されたいんだよ、ねえ。
ああ、絶望。絶望。)


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