救われないジャンキーたちの話
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「ぐしゃぐしゃって道路に落ちてた紙が、血を流して死んだうさぎに見えたんだ。それで、弾かれそうになってたから慌てて飛び出そうとしたんだけど、そこでごみだって気が付いたわけ。」
「そう、それで?」
せっかく上手くいったスノウーヘロインーを奪われたので自分用に奪われたものよりもさらに慎重に調合しながら相鎚を適当に打ってやる。
「それで?俺ってばまだ何かをかわいそうって思う気持ちがあんだなぁと思った、っていう話。」何言ってんだ馬鹿な事を、そう言おうとしたけれどやめた。なぜならレントンは俺の返事を求めずにあーとかなんだとか間抜けな声をだして天国行きのヘロをたっぷり味わって馬鹿になっているからだ。馬鹿に馬鹿と言ってもなんの効果ももたらさない、無駄なのだ。
それに本気で馬鹿だと思っている訳じゃない。誰だってクスリが切れている時ぐらい普通の感覚でいたいはずだ。俺、は、もうだいぶ、なくなった。殺しのライセンスは手に入らない。
きっと俺は憧れている。
「お前は、優しいから」
もう俺の声なんか聞こえていないレントンの目を見て言う。俺はもうそっち側には行けないよ。
「ああ、お前はきれいだな、髪、がきらきら、してるぜ、どうしたんだ。かみさま、とおんなじ色じゃ、ねえか、それ。」
ろれつの回らないレントンが融けた目で言う。こんなに冗舌なトリップは珍しい。死ぬのだろうか?
「かみさま?」
「見えね、えのか?俺、俺の、目の前に、いるじゃね、ぇか!」
ああやっぱり死ぬのだ、とは思ったが悲しくはなかった。俺はもうそっち側には行けないよ。

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