アーロンは豪奢な黒壇でできたビクトリア朝の水槽で気持ちよく漂っていた。するとドアを開けて男が入ってきた。彼は幼い頃から聞かされていた人間像とは違う、おかしな人間だった。
「やあ」
アーロンは水面に顔を出して挨拶する。
「今日は何を読んでくれるの?」
男は屋敷に閉じ込めているアーロンが退屈しないように手を変え品を変え相手してくれるのだ。
「どちらがいい?プルーストの続きと、最近流行りの1984年と」
「プルーストがいいな、マドレーヌの匂い好きなやつだったし」
そう言うと男は確かに、と笑い水槽と揃いの美しい椅子に座って読み始めた。
正直聞いているうちに何がなんだか分からなくなる話なのだが、アーロンは男の低くて優しい声が好きなのだった。
しばらく読んでもらっていると、アーロンの口から大きなあくびが出だした。
「ふ、眠い?」
「んー、でもせっかく読んでくれてるのに勿体ない……」
すると男はアーロンのおでこにキスして言う。
「いつでも読んであげるから眠っていいよ、人魚姫。君が寝てる姿は綺麗だからね」
つくづく変な男だと思う。
アーロンとその男、ジェラルドの出会いはこうだった。
穏やかな海の水面から小さく覗く岩に座り、でたらめな音を鳴らしたり歌ったりしていると人間のボートが近づいてきた。その人間は遠くから見ても分かるほど白蝶貝のように虹色に輝いており、アーロンはつい見とれてしまった。するとその男はアーロンに話しかける。
「やあ、人魚さん」
彼ら人間に安っぽいオカルト的なものと思われている人魚の自分に、その男は快活に声をかけた。
「どうも」
「きれいな歌に誘われてここに来たんだ。とても優しい声だね」
そんな誰からも言われたいことのない、むしろ下手だと言われていた歌声を褒められてお世辞でも少しくすぐったくなった。
「驚かないの?君らの間じゃ人魚は悪く言われてるんだろ?」
「まあね、だけど君に一目惚れしたみたいだ。魂を分けてあげてもいいくらいに」
魂。それは人魚が一番欲しがるものだ。この男の纏う光、すなわち魂が欲しい。なぜならそれは人間のみが持ち、人魚には無いものだからである。それを手に入れる事はとてもとても素晴らしいことだ、そう古くから語られている。
「くれるの?死んじゃうかもしれないのに?」
そうすると男はにこにこしながら言う。
「だって君に分けてあげれば君は俺に恋してくれるから」
アーロンはそれを聞いて眉をひそめる。
「恋に?」
「君の瞳を見れば分かる。恋に落ちれば分かるよ」
困惑しているアーロンを余所に男は続ける。
「俺はジェラルド。ジェリーでいい。それで、君が俺に恋して欲しいから俺のそばで住んでもらいたいんだけどいいかな?」
「そうしたら魂分けてくれるの?」
「勿論。君が住めるように家を改装するから時間がかかるだろうけど、どうかな」
それでこの不思議な白く七色に光る男の魂が手に入るのならアーロンに嫌も何も無かった。そうして改造の終わった今まで見たことがないほど繊細で美しい水槽の部屋のある、家と言うよりは美しい小城に住むことになったのだった。
「狭くないか?」
「いや、落ち着かないくらい広いよ。ここにずっといたらいいの?」
「ああ、もう君を誰の目にも触れさせたくないんだ、愛しい君を」
まったくおかしな人間である。
そうこうしてアーロンはそこに住み、すっかり快適な水槽にすっかり馴染んで甘やかされて、彼が用意した水草の集まりを枕にして眠っていた。するとじゃぼんと大きな音が聞こえ、その原因であるジェラルドに引き上げられた。ぱちくりと水面でジェラルドを見つめ、問う。
「どうしたの?びっくりした!」
「君溺れてたじゃないか!俺は心臓が止まるかと思った……!」
それを聞いてアーロンはすっかり呆れてしまう。
「人魚が溺れるわけ無いだろ。確かに口呼吸もするけど水中でも呼吸できるんだ」
「すごいな……どこで息してるの?」
「耳の裏のとこ」
ジェラルドが好奇心に満ちた眼をしてそこをそっと手で包み撫でる。と。
「あ……」
「悪い、痛かった?」
「ちが、なんかへん……ンッ」
唇を合わされながら両手でそこを同時に撫でられると、なぜか下腹がズクリと疼く。
「は、ん……、なんか、変……」
「嫌……?」
ちゅ、と可愛らしい音を立ててジェラルドの唇口付けられる。思わず逞しい肩に添えていた手を伸ばし、二本の腕で彼の首を絡め取った。
「やじゃない……もっと」
そう言いジェラルドの下唇をそっと噛んだり、柔らかく合わせたりしてその行為を続けていると、ジェラルドの分厚く大きな舌が口の中に入ってくる。アーロンの舌に自分のを絡めて誘い出し、ゆっくりと吸い上げる。かと思うと耳の裏を何度も撫で、その舌はアーロンの口内に深く押し入って上顎をくすぐり、少しざらざらして、熱くて柔らかいそれが深くまで侵入する。気持ちが良すぎてアーロンはその海色に青いとろけた瞳でジェラルドの視線を絡めとると、恍惚としてしまう。
飲みきれなかった唾液を溢れさせるほど夢中になっていると突然全身が激しく痺れ、アーロンは高い声で喘いでしまった。
「ふぁッなに、これっあん!」
「は、アーロン、これは……?」
そう低く掠れた声でジェラルドは自分の太腿に当たったアーロンの美しい色の鱗に覆われた下腹から飛び出した桃色の突起を手で包み何度も擦り上げる。
「ひぁぁあああ!そぇ、ンッ、だめ、だめぇ、ふっ!ぁ、何、なんか、きちゃうかぁ、アン!ぁ、ふあぁぁッ!やああああああ!!」
「まさか……ペニス?気持ちいいの?」
アーロンは生唾を飲みながら止めてほしくて必死に頷くのに、ジェラルドは手を止めてくれない。それどころか桃色に染まったきついスリットの中まで指を入れ、何度も何度も上下に撫でる。
「アーロン、アーロン。綺麗だ……」
絶頂を迎え涙でうるんだアーロンの潤んだ瞳を見ながらジェラルドは甘い声で言う。そううっとりと見つめあっていると、突然ジェラルドは何かに気づき、慌てて言う。
「すまなかった、こういうことは君の同意をとってからでないといけなかったのに……」
その真摯な物言いにアーロンは思わず微笑んでしまう。
「いいんだ、……あの、条件が合えばこれで魂が手に入るんだ」
「へ?」
思わず間抜けな声が出てしまい、ジェラルドはそんなえっちな生き物がいるなんて……だとかなんとか呟いているのを華麗にスルーしてアーロンは薄紅色の貝殻でできたペンダントから緑色の小さい丸薬を取り出して一つは自分に、もう一つはジェラルドに飲ませる。
「もうその、あー……、挿れていい、よ」
こうしてから性行為を行い、人間の精を体内に出してもらえば人魚にも魂が宿ると昔から謂われているのだ。そう驚いているジェラルドに言い伝えどおり口付けては唾液を交換し、何度もそれを繰り返す。
「ん、ジェリー……。きみの、挿れて、はぁっ、ちょうだい……」
その子供のような、しかし淫靡な懇願を聞いて目の前が一瞬暗くなってジェラルドはくらくらと目が回ってしまう。
再び交互にお互いの咥内で舌を絡めあい、吸い上げ、とろりと唾液が零れる。そうしている間にもジェラルドは水槽のガラスを掴み、逞しい腕でアーロンを閉じ込める。そしてふっくらと盛り上がったスリットに立派なペニスを擦りつけ、アーロンを追い詰める。
焦らされて泣き出しそうなアーロンに啄むようなキスで懇願され、ジェラルドのその立派なものを捩じ込んだ。その強烈な甘い衝撃と、アーロンが初めて感じたざりざりとした下生えの感覚に身悶えする。
それはジェラルドも同じでアーロンの狭隘は人ではありえないほどすべらかで、もっと味わいたいがそれにぎゅうと愛されるたびに強烈に射精を促される。
「はぁっ、アーロン、ダメだ、君の中、ァあっ、たまらない……っ」
「やあ、なにっ、すごい……!ァあっ!気持ちいいよぉ……ッ、じぇりっ、アアあァ!あ、あ、あ、あ、っ!ひっ、んっ、んっ、んっ、んっ、んぅ、はァっ!そぇ、もっとして、じぇりぃ……!ひぁああッ!!」
ついに涙を流しながら快楽で満たされたアーロンと同じところへ登ろうと、ジェラルドは水槽から水が溢れるほど激しく腰を打ち付ける。その荒い吐息がどうしようもなく感じて、アーロンは喘ぐしかない。
「ひぁッ、アぅ、ジェリー、もぉ、やァッ、駄目ッだめになる、なっちゃうっ!しんじゃう、しんじゃ、アッ!」
「ゥ、は!ん、んッ、ふっ、はッ、ぁあ、俺も……!!」
「ひぁ、ン、深いぃ……ン!じぇり、じぇりの中、だして、おなか、いっぱいにして……ッ」
潤んだ瞳でねだられ、ぐるる、とジェラルドは獣のように唸ると抽送を更に早める。そしてアーロンの舌を自らので絡めとり、同時にスリットから白濁が零れるほどの絶頂を迎えた。
過ぎる快感に導かれ射精して、アーロンはぐったりと抱きしめたジェラルドの肩に頭を預ける。しばらく二人で荒く息をついていると、アーロンの尾ひれの先から空色にきらめく鱗の色が変わってゆき、徐々に淡い光を纏いだしたのに気付いた。。
「わ……、君の光とおんなじ色だ。ほんとだったんだ!成功した、成功したよジェリー!」
元気になって抱きついてきたアーロンにジェラルドは嬉しそうに笑って、顔中にやさしいキスを降らせ、子供のような笑顔のアーロンを抱きしめる。
「うぁ、や、あ、何、いた、ぃ……!」
「アーロン?苦しいのか?アーロン、アーニー、大丈夫か!?」
「ぅ……はあッ。しんぞう、おかしい……、ああ、君、綺麗だな……」
真珠色の光で薄ぼんやりとしか見えなかったジェラルドがはっきりと見え、その自分を見つめる優しい瞳は愛おしそうに少し細められていて、アーロンの胸のあたりが激しく波打つ。
ジェラルドはアーロンに濃厚な口付けをして、低く甘い声で言う。
「ダーリン、愛してるよ」
「僕も……」
そううっとりと答えながらこれ以上好きになったらどうしよう?本当に死んでしまうかもしれない、そうアーロンは本気で思ってしまったのだった。
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