コナマフ
思春期の悩み。
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「もうやめにしようか。」
こういう事。兄弟がいつものように戯れとも愛の告白ともつかないくちづけを交わす合間にコナーが呟いた。
それは自分に言い聞かせるようにも、自嘲を含んだようにも聞こえたが、マーフィーは驚きの色も見せず微笑んだ。その訪れなどとうに予感していた。
それこそ、兄弟が最初にくちづけをー性的な意味でー交わした時からだ。
「それでどうするの」
顔をまともに見られなくて背けていた顔を弾かれたように上げ、コナーは弟を見た。微笑んだ顔は雪解けのような声よりもよほど甘くておどろいた。
「それで、コナーどうするの。」
マーフィーにとってはすなおな愛の延長上でしかないキスもセックスも、罪だと思いつつも止められないことも、コナーにとっては責め苦でしかないのだ。マーフィーへの愛と神への愛はコナーにとっては別物で、兄弟への劣情はコナーをがんじがらめに縛り付ける。
それを思うだけでコナーの心臓はいばらが巻き付いたように傷むのだ。
「どうするの、確かに誘ったのは俺、拒まなかったのも俺。それでコナーはどうするの。」
薄い、きれいな色をした唇から歌うように流れ出る言葉はコナーの心臓をひどく痛めつけた。その毒は耳に甘く、心に苦い。
「俺はお前の鞭、お前の蛇。お前の岩、お前のマナ。」
ほろほろ涙をこぼしながら、そう言うマーフィーの輪郭すらコナーには滲んで見えた。その微笑みが哀れみなのか誘惑なのか赦しなのかさえも訝しかった。それがどうにもかなしかった。
労働と祈りですっかりくたびれた、けれど相変わらず美しく、命の色をした指で涙をぬぐってやりながらマーフィーは笑みを深くした。マーフィーにとって神に最も愛されている兄を愛する事は、祈りだ。そんな単純な考えを思いつきもしないことがコナーの苦しみで、その苦しみを間近で感じることが自分の苦しみで、自分の祈りを押し付けるだけで救えないことが罰なのだ。柔らかい春の月の色をした髪に指を滑らせる。

天国への階段は枕もとから伸び、その門の鍵は手のなかに。
願わくば、愛してやまないこの兄と、ともにあなたのお傍に置いて頂けますよう。あめのきさき。

幼い頃からの祈りとともに、コナーにくちづけた。

どうしようも、ない。

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