コナマフ
思春期の初恋の気付き。
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マーフィーが兄をいろんな意味で愛していると気がついたのはちょうど髪を伸ばし始めた頃だった、前髪があると幼く見えるので。手に余る感情に怯えたマーフィーは自然とコナーから距離をおくようになった。時間がどうにかしてくれる、そう信じていた。年相応に見られたいほどには幼かったのだ。
「マーフ」
耳に馴染む声に振り向く。声変わりする前のも好きだったけれど、今の声の方が好きだ。そう思ってすこし吃驚した。好きだって。かたちにしてみるとそれは、心臓がぎゅっと縮まる気がする。思ってたよりおれってロマンチストだ、そう考えてちょっと微笑った。
なにか、自分のなかのなにかを刺激しないようにできるだけそっと振り向いた瞬間にあ、だめだ、そう感じた。だめだおれこの人のこと好きすぎる。
時間なんかじゃ解決できないことを悟った。永遠に、かないそうにない。
何だよ、俺の顔になんかついてんのか?そんなとんちんかんな事を尋ねる声(それはそれは甘く低い声でひびくのだ!)、覗き込むようにこちらをみる空色、冬のまぶしい太陽でひかる髪なんかが押し寄せてきて、

(ちかちかして目が痛い)

その痛みまで甘いのだ。いよいよばかだ。意を決してマーフィーは口をひらいた。きんとした空気に全部の水分を持っていかれた、気がした。
「おれのものになってよ、コナー。」
思ったより切なそうな声がでたことをマーフィーが恥ずかしがる前に、コナーは指先でマーフィーの頬をちらりとかすめて(それだけでそこに熱が集まるのを感じた)一瞬空気を溶かすみたいに笑ってみせて、言葉をするりとすべらせた。
「なあ、とっくにお前のものだって言ったらどうする?」
鼻のおくの方がつんとしたけれど、予想に反して涙なんかでなかった。

うそだ。そうきっと、永遠にコナーには追いつけやしないと思うのだ。

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