コナマフ
恋未満の思春期の話。



「コナー、コナー、どうしよう」
怖いんだ、自分の声が時々知らない大人みたいに聞こえるんだ、そういってマーフィーはコナーの肩に顔を埋めた。
部屋に母親の焼くパイの匂いがする頃の話だ。

「どうして」

この前は早く大人になりたいと笑ってたじゃないか。そんな言葉ばかり巡って自分の非力さに吐き気がした。
「かわってしまう、どうしていつまでも子供のままではいられないの。この腕は足はどんどん伸びて骨張って、身体の変化についていけないよ、」
コナーが全然知らない人に見えるんだ、そう言ってとうとうマーフィーは泣きだした。
「マーフ」
できるだけやわらかい声をだす。コナーはマーフィーの涙に動揺している自分に気がついた。
「俺がいるよ、どんな時だって俺はお前を見つけてきただろう。お前が迷子になった時も、ジュニアハイでばかな仮装をしたときも。お前が自分の事を分からなくなっても俺にはお前が分かるよ。」
駄々をこねるみたいに首を振る。コナーは片割れの幼い動作にどうしようもなく愛おしさを覚えた。これは庇護欲だろうかそれとも独占欲だろうか、そう思ったが舌触りが悪いので愛ということにした。もっとも、愛がどんなものかなど分からないのだけれど。
「俺のことはお前が見つけてくれるだろ?」

できるだけそっと頬に手をそえる。右の目蓋にキスを一つ、目尻には二つ。涙は塩味だった。悲しみの濃度は濃い。
「コナー」
見上げてくる赤い目に、鼻にかかった甘い声に(こう言い切ってしまうとあれかもしれないが)、欲情した。
はやくはやく、はやくしないとしんでしまう!
「、マーフ」
だめなのだ。マーフィーが泣くのも痛がるのもいやだけれど望むことも叶えてやりたいのだ。
身体に隙間のできないようにきつく抱き合って、唇を寄せ合い、舌を絡める。ひとつ深くうちつける度に、魂がひとかけら、削られる感覚。
きっと削られて、それでようやくひとつになるのに適したかたちになるのだ。
倫理も常識も関係がないのである。
ただただひとつになろうとするだけ、それだけなのである。

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