SS大統領がヤッてるだけ


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「ベン、はッ、いいか?」
「いい、いいから、マイクっ、早く、早くしてくれ」
「クソッどうなっても知らないからな」
 本来受け入れることのない後孔にマイクの凶悪なまでの性器が押し当てられ、自らを貫く前兆にベンは甘い震えを感じた。
「いくぞ」
 唸るようなマイクの言葉と共に信じられないような質量がベンの胎内を襲った。
「ん"ァああああ!!ぁグ、は、あ、あ、マイク、マイク!」
「クソ、なんだ、これは、はッぁ!」
「あ、ひ、あァアア…!」
「アンタ、ほんとに男は初めてなのかよ……!?ヤバいぞアンタの中……はッ!」
「マイク、マイク、お前だけだ、お前だけ……」
 涙を流しながら告げると、胎内の質量が増し、熱いキスで口を塞がれ、声も上げられないほど無茶苦茶に突かれ、もはやベンは彼に与えられる快楽に溺れるしか無かった。



ーーーーーーーーーーーーー



「はッ!」
 自分の声に驚いてベンは目を覚ました。ベッドを見回しても自分一人だ。
(……まさか、)
 とんでもない夢を見ていたことに気付き、頭を抱えた。夢は潜在意識を現す云々のウィキペディアの記事などが脳裏をよぎるが、目下の心配事は、
(どんな顔をして逢えば……)
だった。


 日課のマイクとのランニングをどうにか終え、シャワールームで頭を冷やして出た。そこに悩みの元凶が腰にタオルを巻いただけの姿で現れた。強烈な夢の後ではあまりに扇情的だった。
「どうした?顔どころか全身真っ白じゃないか。冷たいシャワーを?」
 心配してだろうが、頬に手を当ててくる。その無骨な肌触りにすら甘い疼きを感じる。
「いや、そういう訳じゃ……」
 怪訝そうにマイクはベンを見つめ、腕を組む。これは理由を言うまで許さないという態度だ。そしてベンはそのプレッシャーに勝てた事がない。
「勘弁してくれ、マイク……」
 痛いほど刺すような視線にベンはついに根負けして言った。

「……恥ずかしいんだ、君を見ると」
「なぜ?」
 心底驚いてマイクは言う。
「君に……軽蔑されるかもしれないが……、昨日の夢が原因なんだ」
 しっかりしろ、大統領。ベンは自分を叱咤しながら言葉を続ける。
「抱かれる夢を見た……君に」
 囁くような声で告げた。ああ、これで波乱万丈の大統領生活も終焉か。幾千ものシャッター音とタブロイド紙の幻影が踊る。
 しばしの沈黙の後、マイクはキスをする距離に詰めてきた。
「俺に抱かれる夢を?どんなふうに?」
「そんな……」
「質問に答えて、大統領閣下」
「…………声も出ないほど無茶苦茶に」
 目を伏せて蚊の鳴くような声で告げた。こんなに恥ずかしい思いをしたのはティーンの頃に未経験を笑われた時以来で目眩がする。マイクはそんなベンの顎を撫でながら上げ、視線を合わさせた。
「光栄だな」
「は……?」
 見たことのない笑顔でマイクが言い、ベンの頭はフリーズしかけた。
「気持ち悪くないのか」
「ベンジャミン・アッシャーにそんなことを言われて嫌がる人間が居るとでも?」
 片眉を上げてマイクは笑う。彼は何を言っている?

「ベン、眼を開けてろ」
 そう言ってマイクは見つめ合いながらベンに口付けた。
「夢じゃないぜ、sir. 分かるだろ?」
 そう言って再びキスをした。とびきりディープな腰に来るやつを。
「は、マイク、冗談が過ぎる……」
 飲みきれず溢れた唾液をマイクは舐めあげる。
「冗談でできるほど俺は器用じゃない。知ってるだろ?ベン」
「ああ……クソ、どうなってるんだ」
 口蓋を分厚くて熱い舌で撫で、口内に響くように喋る。全てが快感だった。
「夢での俺以上の事をしてやりたいが……なんせ何も用意してないからな、今はこれで我慢してくれよ」
 そう言ってマイクはベンの腰のタオルを剥ぎ、跪いた。まさか。
「マイク、マイク……やめてくれ……」
 懇願も虚しくマイクはベンの熱を孕み始めた股間に顔を埋めた。
「そんな、嘘だろ、ァ、はっ、あぁぁ……」
 夢で感じた快楽以上の強烈な刺激に思わず眼を瞑る。自分を救ったヒーローが、妻のいる身の男が、何者にも替えがたい友人が、跪いて自分をフェラチオしている。異常な現実に全身を痺らせて興奮している自分がいる。
「だめ、だめだ、っは、ァ、まい…くぅ、ン……!」
「こいつもいいもんだろ?」
「ぁああ!バカ、喋るな、ン!は、あああアァ……!」
 マイクの腔内で果ててしまい、羞恥で死にそうなベンに、にやりと笑ったマイクは見せつけるようにその白濁を嚥下した。
「は、嘘だろ……」
「アンタのもんだと思うと平気なもんだな」
 あまりの衝撃にずるずると腰を下ろしたベンに、酷使したため紅く色づいた唇を舐めあげてマイクはにやりと笑った。
「今夜を楽しみにしてろよ、sir. 」
 美しい水色の瞳を情念でエメラルド色に燃やしながらマイクは囁いた。それこそ、こんな瞳に逆らえる人間がいるのだろうか?ベンは甘く身を震わせ、眼を伏せた。それは了承の合図だった。


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OHF後のSS大統領カプ未満
悪夢に魘される大統領ちゃんのお薬はバニングパイセンっていうお話し



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 ぼんやりとした視界でも、腕が捩じ上げられ安上がりかつ有用なプラスチックの紐が食い込む感触ははっきりと分かる。それだけで恐怖を感じるが、どうにかそれを抑えこもうとする。いつ殴られるのか。覚悟を決めようとそれを考えようとしたが一層恐怖を煽っただけだった。
「誰もアンタを救いにこない」
 どこかで知ったふうな厭味ったらしい声が響く。それは死刑宣告のつもりだったのだろうが、大統領の脳裏には希望の暖かい光りが差した。
 私にはマイク・バニングがいる。
 その後の記憶はあまりない。目が覚め、ふと見ると自分の手を無骨な手で握りながら息子を膝に載せ、ベッドの隣のソファで眠っているマイクがいた。
 カウンセリングなんかよりよほど効くな、と思わず大統領ーーベンは微笑んだ。
「…ん、起きたか、ベン。眠れたか?」
「ああ」
 微笑みながら自分の目を握られた手に向けると、慌てたようにマイクはその手を離した。
「すまない、魘されていたから」
「いや、有難かったよ。本当に」
 友人同士が交わす視線よりは少し熱を孕んだ、おかしな空気で見つめ合っていると、マイクの膝に乗せたコナーが唸るような小さな声を上げた。
 コナーを隣の部屋に運んで行ったマイクはスコッチを手に戻ってきた。暫く無言で酒を酌み交わす。
「……マイク、君は悪夢を見ないのか?傷が疼く事は?」
「ああ、今回の騒動のでは無いな。なにしろアンタを守れたし、傷は俺の勲章だ」
 毅然と言い放つマイクにベンは憧憬を感じた。
「私は君に守られていただけだからな……」
「ベン、傷を見せてみろ」
「なんだって?」
「俺のも見せるから。フェアだろ?」
 酔いのせいか、マイクの謎理論に笑いながら乗ってやり、二人はシャツを脱いだ。
「君の……その新しい傷は全て私のせいなのか……」
 ゆっくりとマイクの傷をなぞる。
「いいや、ミスター・プレジデント。コイツはあのクソったれテロリストのせいさ。だが、アンタの為の傷だと思えば俺の原動力になる」
 マイクが信じられないほど優しい顔で続ける。
「そして、アンタのこの銃創。これのおかげで俺は今生きてるし、ケルベロスも止められた」
 怪訝な顔をしていた私の銃創をマイクが撫ぜて言う。
「アンタが撃たれながらも戦ってたから、奴に隙ができて俺は奴をぶち殺せた。これは、アンタが俺を救って、アメリカを守った勲章だよ」
 マイクはそう言って私の傷痕に口付けた。それは、今まで感じたことの無いほどに甘く腰に響いた。
「君は思ったよりロマンチストだな」
 動揺を悟られないように笑っていう。
「そうさ、大統領閣下。知らなかったのか?」
 
 その後は、なにが面白いのか、二人でティーンの様にくすくす笑いながらシーツに包まって眠った。事件以来最高の睡眠だった。
ーーーーーーーーーーーーーー
「……マイク?」
「お早う、sir。食事は持ってこさせたぜ」
 当然のように言うマイクは腰にシーツを巻きつけただけの姿だった。
「まさか、君、その格好で?」
「?ああ」
 とんでもない噂がハウスに流れる様子を想像して頭を抱えた。しかし、朝日に照らされたマイクはまるで彫刻のように美しく、こんなゴージャスな男と噂になるのも面白いかもな、と笑ってしまった。
「勿論食べさせてくれるんだろう?ナイト様」
「仰せのままに、Your Majesty!」 



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病みヤンシー/病みテンドー。
テンドーの嫁出ずっぱりの男妊娠ネタ

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 それはアラスカでヤンシーが行方不明になり、テンドーが絶望を感じた時に起こった。腹がおかしな感じに膨らんで来たのでテンドー夫妻は医者の元を訪れた。
「想像妊娠です。男性でのこんな症状はとても珍しいのでなんとも言えませが、ホルモンバランスの乱れが……」
 なんやかんやと続く医者の説明にアリソンは真剣に聞いていたが、テンドーの頭に再生されていた思い出はTPOを全く無視したものだった。

『う、ふッ、ぐァ、アアア!……あぁ、は、アッ!あッ、ヤンシー!!』 テンドーは絶頂を迎え、腹に熱い液体の感覚に熱に浮かされてまた絶頂を迎えた。
『ハッ、ハァッ!…テンドー…. 』
 最初はゴムセックスを心がけていたヤンシーは、ここ最近執拗に中出ししてくる。それを不思議に思い、テンドーが尋ねた。ヤンシー曰く、
『俺が死んだ時、俺の子供を産めるように種漬けしてる』
 その笑顔で女なら即孕む様なスマイルに狂気を感じさせる瞳のセクシーさに、テンドーは目眩がするほど興奮した思い出だ。
 遂にその遺言が叶ったのだ。
 「そのうち膨らみは治まるでしょうし、経過観察ということにしましょう」
 医者の冷静な言葉に神妙に頷くアリソンを他所に、テンドーは奇妙に膨らんだ腹にはヤンシーの子供がいる。幻想とはいえ、母性のようなものを感じ、愛しく胎を撫でた。
 愛しい男の愛しい子供よ、俺が無事に産むよヤンシー。そう云う思いを込めて。

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チャーリー/ウォンカさん
久しぶりに見て堪らなかった
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「2月のバレンタインの戦略なんだけど、」
そう言って6月の優しい日差しをチャーリーとぼくは屋上のテラスで(外の空気がアイディアを産み出すというチャーリーのアイディアで急遽工場の屋根にこしらえたのだ。そしてそこでの戦略会議の効果はてきめんだった!本当にぼくの跡継ぎは素晴らしい!)冬の売上のデータをひろげた。
「ほら、日本でのバレンタインの売上はすごいだろ?」
「本当だ!どうして?」
「日本では愛のしるしとして花束じゃなくチョコレートを渡すらしい素晴らしいよね!そこで世界にもそれを広めようと思うんだ。例えば渡して目の前で相手に食べてもらえばぜったい恋に落ちるチョコレートとか!恋人に食べさせたら結婚できるキャンディとか!」
アイディアが無尽蔵にうかび、やる気がメラメラ燃えている僕にチャーリーは言った。
「それはダメだと思う」
「どうして?」
そう、チャーリーは世界で唯一ぼくにノーと言える人間なのだ。
「恋っていうのは、ガラスのエレベーターみたいに相手の言葉で壊れちゃったり、キスをしてもらったら治っちゃって上と外に飛び出しちゃうものなんだ。それは恋する二人に起こる大切なことだから、どんな素敵なチョコレートやキャンディでも、僕らが手を貸しちゃいけないことなんだ。
でもバレンタインの花束チョコレートはいいかもしれない…プレゼントしても枯れないし美味しいんだ!」
すっかり仕事モードのチャーリーだけど、ぼくはそれどころじゃなかった。
「その…妙に詳しいんだけど、チャーリーは恋をしたことが?」
「あるよ」
実際に咲くバラのキャンディみたいに笑う彼の言葉になぜかぼくはホイップクリーム牛用の鞭で叩かれたみたいだった。
「そ、そ、それは、誰なの」
学校とかいうものの人間にだろうか。ぼくには外の世界がわからないけれど、チャーリーはそこから来たのだ。可能性はある…そう思ってぼくの気持ちはダストシュートを高速で落ちていった。
「あのね、相手は有名人で最初は噂だけだって、憧れてたんだ」
(ぼく以外の!?)
「でもあるとき奇跡が起こって実際に会えたんだ」
(ゴールデンチケットよりすごい奇跡なんだろうか?)
「初めて会ったその人はとってもきれいなんだけど変わってて」
(きれいだなんてきっとぼくみたいにヘンな髪型じゃないんだ…)
「僕なんか眼中に無いって感じでね」
(こんなにステキな子を!?ありえない!)
「でも一緒にしばらくいると、すごーく優しくて、子供みたいに純粋で、そして素晴らしい天才だったんだ!僕はすっかり夢中になっちゃった」
(あ…目の前が虹色ペロペロキャンディみたいに回る……)
「その上彼は僕の事を選んでくれたんだ!こんなに幸せなことってないよ!」
その言葉を聞いてついにぼくはタイルクッキーに膝をついてしまった。
そんなぼくにチャーリーは無情にも天使みたいに微笑んで、ぼくの顔にマシュマロ色の両手を添えて言った。
「気がつかない?ぜんぶウォンカさんのことだよ」
「へ?」
「僕は最初っからあなたに恋してるんだ」
そういってぼくのほっぺたに唇をつけた。
どういう意味かわからなかったけど、そうされてぼくの脳みそは機械から蒸気がでたみたいになるし、心臓はウンパ・ルンパの歌の早い太鼓のリズムを刻むし目は妙にちかちかしてチャーリーがおひさまみたいにみえた。
「チャーリー、ぼくおかしくって君の言ってることがわかったようなわからないような、どうしよう、これは治るの?」
すると彼は大人みたいに笑って僕の口に自分の口をくっつけた。
「チャーリー、これは何?」
「これがキスだよ、ウォンカさん。治った?」
「……ぜんぜんよくならない、もっとしてくれないとわからない」
生きてきた中で一番甘えたみたいな声が出てしまって恥ずかしくてチョコの滝に飛び込んでしまいたかったけれど、チャーリーはなぜか嬉しそうに笑ってキスを沢山してくれた。

それから、頭の沸騰はちょっと治まったけれど、それからもずっとぼくの胸はドキドキしっぱなしなのだ。

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コンスタンティンとドグマのクロスオーバー。
バートルビー/ロキ前提のロキとルシファーとの駄弁り。
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雨上がりのいやな湿気と靄の中、5マイル先の丘がけぶって見える。小さな町の夜更けだ、動いているものといったら休むことを知らない風と開けた路地で話をしている男たちくらいのものだ。片方の青年はうんざりしたように口を尖らせ、もう片方の帽子から靴まで白い男は愉快そうに立っている。しかし強盗という訳でもなさそうだ。
七つの大罪を犯すには月の光が穏やかすぎる。
「こんなもん・・映画のチケットでもくれりゃいいのに」
青年はくるくると器用にスコッチの瓶を回す。天使は酒に酔わない。
白スーツの男は笑って言う。
「それはできないな、マイ・ボーイ?そんなことをしたらお前のアマートルと行くんだろう?」
「いい人(アマートル)?」
両手を広げ、天を仰ぐお決まりのポーズをする。手を下げるのと同時におおげさな嘔吐の真似も忘れずに。
「やめろよそんな言い方。なんていうか、そう、不愉快!不愉快だ」
そう言うと白スーツは肩を竦め、それが仕事でね、とまた笑った。心底愉快そうな男を見ながら青年は密やかな(しかし確実な)朝の匂いを感じた。ハーフ・ブリードならいざ知らず生身の悪魔って日の光とか平気なのか?そもそもなんでこんな状況になったんだっけ?

『彼女が踊りにくる前に』

許してくれ、そうさけぶ男を続けて殴る。バートとささいな喧嘩をしていらついてる俺に声をかけたコイツが悪い。HBだっていうのがなおさら悪い。ストレスをぶつけるには最高の相手だ。もちろん悪魔のほうの。そりゃそうだ、いくら退学になったからって初等部の下級生が高等部の生徒会だった奴に声なんかかけられるはずがない。あ、いまのたとえいいな、帰ってバートの機嫌が良ければ教えてやろう。覚えてられたらだけど。だいたいバートはちょっとヒステリックだ。そこも好きだけど。あ、いまのちょっと人間っぽい。そう思って笑った。
男が急に重くなったので手を離す。ごとり、やわらかく包まれた頭蓋骨がいやな音をたててアスファルトにぶつかった。気を失ったのかと思ってのぞき込むけれど、男は目を見開いて何かに怯えてるようだった。背中に氷柱をつっこまれたような気配を感じて振り返る。全身白できめたキザなおっさんがたって笑っている。これがさっきのいやな感じの正体?首を傾げていると後ろでキング、なんて呟く声が聞こえた。キングはポーンに命令する。悪魔のHBがキングと呼んでしかもおとなしく地獄に帰る?天国にキングは一人しかいないし、地獄にだって一人だ。ってことは?
「ルシファー?」
「ロキ・ボーイ、パパはどうした?」
質問に質問で答えるなんてナンセンスだ!そう思ったけれど否定しないってことは本人だ。
「てかパパって。」
「おや、気に食わなかったか。お目付役だよ」
「なんで知ってんの」
「おやおや自分達がどれほど有名か知らないらしい」
まあ、それには答えないことにする。
地獄の王さまがこんなしみったれたとこにいてもいいのかと聞けばあいつだってしてるだろう、なんでここにそう聞くと寄り道だよ、ものずきだな、そう言うとそれも仕事でね、だ。まったくまともな会話も出来ない。
「何しに?」
「坊やの顔を見に来たら、殴られてるのが私の部下だったからな」
「ふうん」
「私は良い社長だから平社員にも救いの手を伸べるのさ」
そういいながら俺の手を取る。あ、せくはら。
「殴るなんて粋狂だな、もっと良いものをあげよう」
そういって茶色い液体の四角い瓶を取り出した。

「かわりにお前の魂を!!とか言わない?」
「テレビの見過ぎだ」
だよな、なんて言いながら渡された酒をジンジャーエールみたいに飲みほして地面に置く。ショックリー・ハードボイルド。妙に人臭い動きのロキに、ほとんど優しいと言っていいようにルシファーは笑う。堕天使なんかよりももっと人間は楽しいし、人間なんかよりももっとこっちの世界は楽しいさ。
「さて、お前のママがくる前に帰ろうかね」
「あ、やっぱ日の光は弱点?」
ルシファーは少しだけ驚いた顔をしてあれにもこんな素直さが欲しいな、と聞こえないように呟いた。頬をうんざりさせる月曜の朝の風が撫ぜて行く。今日は客で込み合いそうだ。
「いや、弱点ではないが不快だよ」
そう言って白い帽子を少し上げ、去って行く。
ロキは酒臭い息を一つ吐き、それとは全く逆方向に歩き出す。
バートになんて言い訳しよう。



ーーーーーーー
Sさんに!

拍手[2回]

コナマフ
あっけらかんとした死についての話
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「俺が死んだらどうする?」

酷い質問を昼飯のメニューを尋ねる様な気軽さで抱きつきながら聞いてくる。(返り血の付いた服でやるのは止めてほしい。)
マーフィーは幼い頃からこの質問を繰り返してきた。それこそ、死を覚束ないながらも理解した時からだ。コナーはその愛されるためにつくられた甘い顔を持つ弟の、美しい空の目を見つめる。
生まれたときからこの眼前に晒されているのにいつまでたっても慣れないし、いつだってコナーは不安になる。この世界に安全など存在するのだろうか。ぼんやりとコナーは思う。
コナーはいつかその光に撃ち殺される。
「どうするって?」
コナーが服を脱がせながら意地悪く尋ねると、マーフィーは答えが返ってこなかったことに子供のように拗ねて薄い唇を尖らせる。「ファック、後追いするか気ィ違えちまうか俺を思って泣きながら生きてくかってことだよ」わざと望む答えを言わずに言う。それにしても、相手を忘れて楽しく人生を過ごす、などという愚かな選択肢は存在し得ない、ということを実感させるのにこの質問は実に最適だ。
「わかってるくせに」
服を汚れた床に投げ捨てる。(今週の洗濯当番はマーフィーだ。)劣悪な恋愛映画は罪だと思うけれど、実際自分がやるのはそう嫌いじゃない。つまりは、ロマンチストなのだ。愛してるなんて囁いてみるのも、イェーツやオーデンを愛するのも、小さいキスをあちこちに落とすのも。コナーは考える。誰に言い訳してるのか分からないが、そう云う事だ。
窓からは夕暮れのサンディーブラウンとバラの香り、すばらしく陳腐でコナーは思わず笑いたくなる。おお感謝します!
マーフィーがねだるような顔をしたので(この顔がコナーはたいへん好きなので、つい甘やかしてしまうのだ。)全てを奪うようなキスをしてやり、我慢の限界が近づいたので答えてやる。コナーの魂の片割れは使命を果たした後は何時にも増して短気になるのだ。
「ばか、俺はお前と一緒に生まれたんだから一緒に死ぬに決まってるだろ。元々一つの肉塊だったのだから。そんで二人で、そうさ、一緒に俺たちの慈悲深い主の元に行くんだろ?きっと大喜びで迎えてくれるさ。(俺がマーフを愛するよりも俺を愛しているのはマーフで、マーフが俺に依存するよりもマーフに依存しているのは俺、なのだ。たぶん。)」
マーフィーはとろけた目で満足そうに笑って、「愛してる、コナー。」コナーが望んでいるように丁度キスをした。使命を果たした後はいつも考えられない程甘ったるい空気を作るのだ、恥ずかしい!


さて、それで、我々は、
罪人なのでしょうか?

拍手[6回]

カプ未満
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レントン、そう叫ぶ声と門を蹴る音で目が覚めた。人の眠りを妨害する奴は犬にケツを噛まれてくたばればいいのだ。
こんな事をするクソ野郎は一人しかいねぇ、そう判断を下して叫ぶ準備をする。門をよじ上る耳障りな音が響く。
大きく息を吸い3つ数える。1、2、3!
「レェーントォォーン!!」
「死ね!」
勢い良くドアを開けると、そこには足元に水溜まりを作って馬鹿が立っていた。やっぱりだ!
「何してんだてめぇ!」
「えーひどくなーい?レントンに会いたかったからさー」
「傘って知ってるか、シックボーイ?ア・ン・ブ・レ・ラァア!お前みたいにならないように発明されてんだぞ?なんだお前スパッドにそっくりじゃねえか!」
『ずぶ濡れボーイズ』
――陽気なシックボーイにろくな事はない。
「で?何の用だよ」
「別に。散歩でもしようかなと」
「ハァ?」
「雨が降ってるから」
「帰れ、俺はお前みたいに雨の中を歩く趣味はねえ」
「ひでー。じゃあ雨宿りさせてよ」
「雨ん中歩いて帰ればいいじゃねえか!」
「んーわかんねえかなぁ、とりあえず優しく家の中に入れてもらって、そんで風呂に入れさせてもらおうかな、なんて」
もう一度怒鳴り付けようかと思ったが諦めた。腹が減った。

雨に濡れた服っていうのはどうも匂うからバスルームに押し込んだ。泡風呂がいいとかなんだとかとか煩いから、ダイアンの入浴剤も一緒に放り込んだ。偶々手元にあったからというだけで、決して甘いわけじゃない。
「レントンー」
「んだよ」
「もー結婚しよーぜー」
「死ね」
「ははっ雨が傘に当たる音聞いてると死にたくなる」
「は?」
「聞いてみ?川に飛び込みたくなっから」
「だから傘をささねえってか?くたばれ」
バスルームのドアに寄り掛かって座り込んでビールを喉に流し込む。あいつの話をまともに聞いてるとこっちまで頭がおかしくなる。
「レントンー」
「今度は何だよ」
「たとえばさ、このままヤクをやり続けるだろ、そんで脳みそ空っぽになるだろ、そしたら俺はお前の事も忘れるかなあ」
「そーだな」
適当に返事をうちながら、一つの強烈なイメージが俺の頭を支配した。白いタイル、白いバスタブ、白い泡、白いサイモンの体、髪の毛。泡がぶくぶく増えてって、全てが溶けて、混ざりあって、俺はそれらを区別できなくなる…

うんざりだ。
「俺さ、他の何がどうなってもいいけどそれだけはちょっと悲しいなぁ」
「ハ、その前に死んでんじゃねえの」
「あー、うん、うん。それなら死んだほうがマシだな。」
「ばか」
「なー今日修道院長んとこ行く?」
「‥‥雨が止んだら」

雨はまだ降っている。
哀しいかな、地獄行きのスーパーエクスプレス・チケットを捨てられない俺たちは、善良な市民(くそくらえ!)に劣っているのだ。

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鹿犬
リリー出てきます。
ーーーーーーーーーーーーー




ああごめんごめんねどうしよう、俺が悪かったよどうしたらいい?君の言うようにするよ!
「だから泣かないで」

抱きしめて俺の指を撫でていう。
俺のくせの強い髪を梳きながら好きだという。
額、目尻、口の端に順にやわらかく口づけて、だから望みを叶えたいのだという。

馬鹿馬鹿しい、お前のそういう甘ったるいところが嫌いだ、と思う。口にはしないけれど。
いやだばかへんたいいっぺんしね、罵倒ならヘラヘラ笑ってなんともないで流せるくせに、きらい、これだけは流せない。らしい。とくに俺の。(これは自負でも高慢でもなんでもなくて、だいたい嬉しくもない、実地に基づいた結論だ)

だがこの忌々しい状況に陥ったのも、元はと言えば俺の弱さが招いたのだ。
あの黄色と赤のタイを結び、妙に甘酸っぱい匂いのするような学園生活で。

どうして泣くのと問われても困るのだ、自分でも訳が分からないのだから。
なにか大きなきっかけがあったわけでもなく、特別な感情の高まりがあったわけでもない。
ああ、強いて言えばここ何ヶ月、何年かの、

「お前、いつになれば俺を許してくれるの」

そう言って見上げた先(きっと俺の顔は茫然としていたことだろう)の男の笑顔は凍り、ひどく傷ついた目の色をしていた。
ざまあみろ、しかしそれでさえ十分ではないのだ、この男が理解したところと、俺たちの意図するところは全く違うのだから。

・・
たちとしたのには大きな理由がある。即ち俺と、リリーだ。

(本当はあなたにする話じゃないんでしょうけれど)
(あなたが一番わかってくれるだろうから)

(許してね)

(ジェームズはなんだって手に入れることができるのよ、望むと望まざると。)
(少し微笑めばいいの)
(そうすれば世界だってその座を明け渡すのよ)
(彼がひどいのは望まざると手に入るってことを知らないから)
(だから彼はあなたやわたしの様にプライドの高い人間が好きなのよ、手に入らなそうだから。)
(リーマスもそうね、あの子は極端に臆病だから、ああ、悪い意味ではないのだけれど)

(わたしがプロポーズされた時なんて言ったと思う?)
(一回目は悪い冗談ね、二回目はごめんなさい、三回目は仕方ないわね考えておくわ、よ)
(最初っから泣きたいくらい嬉しかったのに!)

そう言って俺の前で泣いたリリー、俺は情けないぐらい震える手で彼女の薄くてやわらかい背中をなぜてやるのが精いっぱいだった。


「…そうやって、僕を困らせるところも、愛してるよ」
そう言って泣きそうな顔で笑い、いやに真剣な目で俺を抱きしめるこの男!言うに事欠いて愛してるだと?こいつはどうせ、俺が逃げたいのは今の状況、リリーとジェームズの板挟みからだとでも思っているのだろう。ばかな事を。俺が、俺たちが許されたがっているのは一言、お前がいとも簡単に口にするその一言を言う事だというのに!


(分かるよリリー、だいじょうぶ)

(リリー、リリー泣いていいよ)
(話を聞くだけしかできなくてごめん、ごめんねリリー)




「(お前、逃げ疲れた俺が愛してると、ずっと前から愛してたと言ったら、今みたいに抱きしめたりはしないんだろう?)」


ああ、無闇に大声を上げて、泣きたいような気もする。

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