診断メーカーの



ーーーーーーーーー−−−−−−−−−−

「おはよう」
「おはよ」
ベンはキッチンで朝食を作っているマイクの背中に抱きつく。
「パンケーキ?」
「ああ。好きだろ?」
「うん。あー」
覗き込んで口を大きく開けて指差す。
「わるい子だな」
そう言いつつもマイクは笑って指に生地をつけて差し出す。
「ん、美味しい」
「焼いた方が旨いだろ」
「つまみ食いが一番美味しいんだ」
ベンは笑いながら手元にあったバターをマイクに渡した。
「それ俺のシャツか。目の毒だな」
シャツの袖がぶかぶかなのを見てマイクは苦笑いする。
「わざとだよ?」
「ベ〜ン、勘弁してくれ、火傷するぞ」
何度見たって可愛い恋人の鼻をつまんで言う。
「後でな」
してやったり、という顔のベンにマイクの顔も綻びる。前はどんなに近くにいても手も握れなかったというのに、そう思いながらマイクはパンケーキをひっくり返した。


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マイクとベンのはなし(たぶんデキてない)
誰も得をしない


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「マイク、ちょっと」
 忙しない公務を終え、人気の無くなったオーバルオフィスでベンに名を呼ばれた。呼んだ当の本人はくるりと椅子ごと向こうを向いてしまった。こうされるとばかでかい最高級のプレジデントチェアの向こう側は監視カメラからさえも死角になる。マイクが訝しがりながらも傍へ行くと、人の良さそうな笑みを浮かべ手招きされる。渋々彼の正面に立つと、にこにこしながら両手を握られ、思わず困惑した声を上げる。
「サー、」
「警護対象から触られたんなら、君らのルール違反には当たらないだろう?」
 相変わらず笑いながらベンは言った。
「しかし不適切だと思うが?」
 ついにベンはクスクス笑いだした。
「マイク、君はどうやって私をころす?」
 は、マイクは腹の中に氷の塊がぶち込まれたように血の気が引くのを感じた。彼は、このひとは、一体何を言っている?
「なあ」
 マイクを悪戯っぽく見上げながらベンは楽しそうに続ける。
「銃やナイフは使ってくれるなよ。こうやって、」
 そう言いながらマイクの両手を首に添えさせた。
「あぁ……」
 ベンはまるでセックスをしているかのように感じ入った声をあげ、とろりと融けた瞳でマイクを見つめる。
「こうやって、私の眼をみて、やれよ」
 にこりと笑った。まるで悪魔のように。マイクは慌てて両手を引いた。
「さて、今日はもう休もうかな」
 さっきまでの妙なやり取りなど無かったかのように朗らかにベンは言いながら立ち上がった。
「マイク?どうした。移動するぞ」
「あ、ああ……」
 今のは何だったんだ?マイクの頭は混乱を極めていたが、恐らく回答を得られることはないだろう。そんな気がした。せめて、今の手の震えだけでも誤魔化せればいいが。そう思いながらマイクはきつく両眼を閉じた。

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ロンドンハズフォールン後のエアフォースワンおせっくす

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 ドクタールームでの治療を終え、大統領閣下の「私のシャワールームで汚れを落とすといい」というありがたいお言葉にマイクは従うことにした。
 ドクターからの傷口を出来るだけ濡らすな、というお小言と共に頂戴した替えの包帯と、帰国用の着替えを持ってエアフォースワン先頭のプレジデントスイートのドアをノックした。
「マイクです、大統領」
「どうぞ」

 ドアを開け、室内に入った瞬間にタックルと噛みつくようなキスに襲われた。後ろ手に部屋の鍵を閉め、犯人であるベンに啄むようなキスで応えながら執務デスクまで移動させる。外に声が漏れては不味い。隙きあらばその柔らかな舌を入れてやろうとする口付けを繰り返し、甘えるような吐息がマイクの耳孔を犯す。
「マイク、まい、く……ン」
「ん、ベン……待て、こら、まて」
「待てな、い……ン、まいく」
 下唇を食まれながらベンの尻を掴み、小ぶりなその双丘を揉みしだきながらよく鍛えられた自らの脚でベンの昂りを押し付け刺激してやる。それは痛いほどに勃ち上がっていた。
 それもそうだ、生まれて初めて手を血に汚し(それが自分のためだという事実はマイクにとってあまりにも甘美すぎた)、あまつさえ全世界に見られながら命の危機を乗り越えたのだから。とことんまで付き合うしか無い、そうマイクは判断した。実際、ベンジャミンの熱はマイクをまで燃やし始めている。
 デスクにベンを座らせ彼のバスローブを剥ぎながらマイクは大統領専用機のデスクに異質のものを見つけ、手に取った。
「ワセリン?」
 マイクが聞くと、目を逸らしながら羞恥で消え入りそうな声でベンが言う。
「さっきの……治療のときにドクターに貰った」
「まさか準備してた?」
耳まで赤く染めたベンジャミンは子供のように拗ねた顔で答える。
「……治療で脱いだおまえを見たせいでヤりたくなった。悪いか?」
 マイクはその幼い様子とアンバランスな欲望に奮い立つと
「じゃあ早速役立てるか」
と、ベンが堪らなく好きな低く色めいたとびきりの声で笑った。

 飛行機内とは思えないほどのシャワールームへマイクはベンジャミンを抱えながら移動した。ここの丈夫な扉を閉めてしまえばエンジン音と相まって声を上げようが漏れる心配はない。今日のベンに声を抑えるのは無理な芸当だった。
「マイク、頼む、もう焦らすな」
「しかし、」
 ベンの熱に煽られてしまったが、その貞淑な秘部を十分に解したとは言えなかった。
「まいく……」
 ベンは蕩けて藍色が濃くなった瞳と期待に掠れた声でマイクに囁く。
「おまえに与えられるなら……痛みだってなんだっていいんだ……」
 その言葉を認識した瞬間、マイクはベンを自らの猛ったもので一気に貫いた。
「ぃ、ンぁあ"あああッ!!!!」
  ベンは衝撃で白濁で二人の腹を汚しながらその美しい声を上げ、達した。
「は、あんた、……はッ、クソ!煽り、過ぎだ!」
 ベンの柔らかな白い下腹が未だ絶頂に震えているにも関わらず、マイクは激しく突き上げ続ける。
「ひぃ、ン!まい、マイク、も、まって、イッて、からぁ、アアッ!ァあ、んんッ!」
「く、ン、ベン、ベンそんなに、締め付ける、な……アンタの中で、イッちまう」
 スキンもねえのに、そう吐き捨てたマイクの頭に縋りつき、鼻梁を重ね、甘えて擦りつけて囁く。
「いい、中で……私の中でイッてくれ、」
「しかし、」
 鍛えているにしては細い両足がマイクの鍛えられた腰に絡む。
「おまえと、はッ……、私が、生きてるって、ぁあ、教えてくれ……」
 マイクは唸り声をあげ、ベンを抱えなおし彼の胎内に己の精をぶちまけた。
「んんんんんッ、ン!ん、は、ぁは、あつい……」
 マイクの精で満たされた事実で甘く腰を震わせたまま、堪えきれない恍惚のため息をついて言ったベンに、マイクは口付けた。
「ッは、なあ、一人で弄ってたのか?これまで?」
 一度達したにも関わらず芯を持った己でベンジャミンの性器と化した秘部をいたずらに撫でながら尋ねる。
「ああ……ちっとも抱いてくれないクソ野郎のやり方でね」
「最高だな、次は見せてくれ」
「変態。あ、」
 何かに気づいたベンはマイクの自分の為にできた腹の傷の辺りまで指を滑らせた。そこは獣のような律動のためか包帯に僅かに血が滲んでいた。
「まいく、降ろしてくれ」
「これくらいなんともない」
「いいから……」
 しぶしぶとマイクはベンを降ろした。しかし。
「この体勢なら多少負担は軽いだろう?」
 ベンは普段の潔癖で清廉なムードはどこへやったのか、壁に手を付け、恥ずかしそうに立ち、マイクの方を見遣った。誘う尻から白い太ももにマイクの精液が溢れ伝う。
「まだ、お前を開放してやるわけにはいかないんだ」
 そう言って困ったように眉を下げながらも娼婦のように淫蕩な笑みを浮かべた。
「マジかよ……あんた最高だ」
 マイクはベンの腰を掴み秘部に再びガチガチになった自らの肉棒を押し当てた。それだけで蕩けたベンのアヌスはさざめく。今度は焦らすようにゆっくりと浅く腰を進め、そして強く引き出す動きを繰り返す。
「ん、んんゥあ、はっ、バカ、ぁっ!早く、奥まで、ファックしろ、マイクっ」
 ああ、クソ、どこでそんな煽り方を学んだんだ?そうは思うが、我慢できないのは自分も同じで彼の命令通りマイクは最奥まで突き挿れた。
「ん"アアああアッ!!あ、ひっ!ぅ、ふか、深いいい……!んんぅああぁ……」
「ああ、ヤバい、わかるか、あんたの奥、俺の形にぴったり広がって、ん、吸い付いてくる……、はッ!最高だな」
 マイクの言う通り、快楽ですっかり性器と化したベンの妖しく絡みつく直腸の奥に深く何度も何度もマイクの剛直で繰り返しキスのように繰り返し突く。
「アッあっあっあっあぁッ!!おく、奥すごぃい……ぁあああア!!!ん、もっと、そこ!ああッ!もっと、は、欲しい……ッ!」
「これが、好き?」
「好き、すき、まいく……すき」
 マイクはベンの白い背中に逞しい身体を押し付けて訊ね、快感で真っ赤に染まった首のつけねにマイクは歯を立てた。
「んあああああああああっ……!!」
マイクに噛まれた、ベンはその甘美な痛みで何度目かわからない絶頂を迎えた。
 あまりの快感にベンはその美しい瞳で涙を流している。全身で感じいって震える耳の裏をマイクは舐め上げた。ベンは苦しい体勢にも関わらず顔を振り向かせ、快感で涎を唾わせながらマイクに長い長いキスをする。
「いいもんだぜ、あんたがドライでイくたびに、ゥ、中が俺を愛してる愛してるって、ハッ、うねって締め付けてくるのは!どんだけ、気持ち良いかわかるか?」
 ぐんっと腰を突き上げる。
「ひ、ァん!!そんな事、分か、らなッ!あぁっ」
「美声で知られてる、あんた、のこんな声が、知れたら、ッは、世界がひっくり返るな」
「ん"ぅ、あっあっあっ!ひ、ンぅ、どんな、声だ、ばか、あっあっ!」
 高速で奥まで抜き差しされ、快楽に流されつつも憎まれ口をたたく彼を愛しいと思いながら、マイクはとびきりの低く甘い声でベンの耳に注ぎこむように囁く。
「ん?私の、愛しい愛しい、護衛官のペニスが、好きで好きで、たまりません、って声だ」
 慌てて耳をで覆う様を愛しく思う。
「んぅ、耳、やだ、やめてくれ…んぅっ」
「、く、はっ」
 感じ入っているベンの顔が見たくてマイクは柔らかな腰を掴んだ手に力を入れベンをひっくり返し、座ってベンを乗せた。
「ヒ、ぁあ"あ!!んッばか、ばか急に、」
「すまん、どうしてもあんたの顔が見たくて」
 そう甘く囁かれてはベンに勝ち目はない。ただし、仕返しとばかりに急にベンが腹に力を込め、マイクはその快感に眉を顰めた。
「…ん、ふ、うっ……!」
「あ、はっ、お前の、その顔が好きだ」
 ベンは優しくマイクの頬に手を沿わせ、ローティーンのように啄むキスを顔中に何度も繰り返した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 新しいスーツに着替え、マイクは到着後のスケジュールを持ち執務室のドアをノックする。
「どうぞ入ってくれ」
 中に入ると、五時間前にはあんなに快楽で身悶えていたベンはいつもの”大統領”に戻っていおり、タイを結ぶ彼にマイクは感嘆と少し悔しさを覚えた。
 彼の爽やかな美貌に腫れが出来ているのにマイクは眉を顰めた。奴らなどガス爆発より熱い地獄の炎で焼かれればいいと思いながら、白々しい顔で言う。
「ワシントンD.C.に着き次第WG大学病院で精密検査をしていただきます。問題がなければそのままハウスまでお送りします」
 うんうんと頷きながらタイを締め終えたベンは神妙な顔をして言った。
「マイク、レイプ検査は受けないぞ」
 とんでもない台詞にさすがのマイクも吹き出してしまった。
「君が逮捕されたら困るからな」
 しれっと言うベンにマイクは頭を抱えた。ベンはクスクス笑いながらウインクをしてくる。自分は一生この人には敵わない。

拍手[10回]

SS大統領がヤッてるだけ


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「ベン、はッ、いいか?」
「いい、いいから、マイクっ、早く、早くしてくれ」
「クソッどうなっても知らないからな」
 本来受け入れることのない後孔にマイクの凶悪なまでの性器が押し当てられ、自らを貫く前兆にベンは甘い震えを感じた。
「いくぞ」
 唸るようなマイクの言葉と共に信じられないような質量がベンの胎内を襲った。
「ん"ァああああ!!ぁグ、は、あ、あ、マイク、マイク!」
「クソ、なんだ、これは、はッぁ!」
「あ、ひ、あァアア…!」
「アンタ、ほんとに男は初めてなのかよ……!?ヤバいぞアンタの中……はッ!」
「マイク、マイク、お前だけだ、お前だけ……」
 涙を流しながら告げると、胎内の質量が増し、熱いキスで口を塞がれ、声も上げられないほど無茶苦茶に突かれ、もはやベンは彼に与えられる快楽に溺れるしか無かった。



ーーーーーーーーーーーーー



「はッ!」
 自分の声に驚いてベンは目を覚ました。ベッドを見回しても自分一人だ。
(……まさか、)
 とんでもない夢を見ていたことに気付き、頭を抱えた。夢は潜在意識を現す云々のウィキペディアの記事などが脳裏をよぎるが、目下の心配事は、
(どんな顔をして逢えば……)
だった。


 日課のマイクとのランニングをどうにか終え、シャワールームで頭を冷やして出た。そこに悩みの元凶が腰にタオルを巻いただけの姿で現れた。強烈な夢の後ではあまりに扇情的だった。
「どうした?顔どころか全身真っ白じゃないか。冷たいシャワーを?」
 心配してだろうが、頬に手を当ててくる。その無骨な肌触りにすら甘い疼きを感じる。
「いや、そういう訳じゃ……」
 怪訝そうにマイクはベンを見つめ、腕を組む。これは理由を言うまで許さないという態度だ。そしてベンはそのプレッシャーに勝てた事がない。
「勘弁してくれ、マイク……」
 痛いほど刺すような視線にベンはついに根負けして言った。

「……恥ずかしいんだ、君を見ると」
「なぜ?」
 心底驚いてマイクは言う。
「君に……軽蔑されるかもしれないが……、昨日の夢が原因なんだ」
 しっかりしろ、大統領。ベンは自分を叱咤しながら言葉を続ける。
「抱かれる夢を見た……君に」
 囁くような声で告げた。ああ、これで波乱万丈の大統領生活も終焉か。幾千ものシャッター音とタブロイド紙の幻影が踊る。
 しばしの沈黙の後、マイクはキスをする距離に詰めてきた。
「俺に抱かれる夢を?どんなふうに?」
「そんな……」
「質問に答えて、大統領閣下」
「…………声も出ないほど無茶苦茶に」
 目を伏せて蚊の鳴くような声で告げた。こんなに恥ずかしい思いをしたのはティーンの頃に未経験を笑われた時以来で目眩がする。マイクはそんなベンの顎を撫でながら上げ、視線を合わさせた。
「光栄だな」
「は……?」
 見たことのない笑顔でマイクが言い、ベンの頭はフリーズしかけた。
「気持ち悪くないのか」
「ベンジャミン・アッシャーにそんなことを言われて嫌がる人間が居るとでも?」
 片眉を上げてマイクは笑う。彼は何を言っている?

「ベン、眼を開けてろ」
 そう言ってマイクは見つめ合いながらベンに口付けた。
「夢じゃないぜ、sir. 分かるだろ?」
 そう言って再びキスをした。とびきりディープな腰に来るやつを。
「は、マイク、冗談が過ぎる……」
 飲みきれず溢れた唾液をマイクは舐めあげる。
「冗談でできるほど俺は器用じゃない。知ってるだろ?ベン」
「ああ……クソ、どうなってるんだ」
 口蓋を分厚くて熱い舌で撫で、口内に響くように喋る。全てが快感だった。
「夢での俺以上の事をしてやりたいが……なんせ何も用意してないからな、今はこれで我慢してくれよ」
 そう言ってマイクはベンの腰のタオルを剥ぎ、跪いた。まさか。
「マイク、マイク……やめてくれ……」
 懇願も虚しくマイクはベンの熱を孕み始めた股間に顔を埋めた。
「そんな、嘘だろ、ァ、はっ、あぁぁ……」
 夢で感じた快楽以上の強烈な刺激に思わず眼を瞑る。自分を救ったヒーローが、妻のいる身の男が、何者にも替えがたい友人が、跪いて自分をフェラチオしている。異常な現実に全身を痺らせて興奮している自分がいる。
「だめ、だめだ、っは、ァ、まい…くぅ、ン……!」
「こいつもいいもんだろ?」
「ぁああ!バカ、喋るな、ン!は、あああアァ……!」
 マイクの腔内で果ててしまい、羞恥で死にそうなベンに、にやりと笑ったマイクは見せつけるようにその白濁を嚥下した。
「は、嘘だろ……」
「アンタのもんだと思うと平気なもんだな」
 あまりの衝撃にずるずると腰を下ろしたベンに、酷使したため紅く色づいた唇を舐めあげてマイクはにやりと笑った。
「今夜を楽しみにしてろよ、sir. 」
 美しい水色の瞳を情念でエメラルド色に燃やしながらマイクは囁いた。それこそ、こんな瞳に逆らえる人間がいるのだろうか?ベンは甘く身を震わせ、眼を伏せた。それは了承の合図だった。


拍手[26回]

OHF後のSS大統領カプ未満
悪夢に魘される大統領ちゃんのお薬はバニングパイセンっていうお話し



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 ぼんやりとした視界でも、腕が捩じ上げられ安上がりかつ有用なプラスチックの紐が食い込む感触ははっきりと分かる。それだけで恐怖を感じるが、どうにかそれを抑えこもうとする。いつ殴られるのか。覚悟を決めようとそれを考えようとしたが一層恐怖を煽っただけだった。
「誰もアンタを救いにこない」
 どこかで知ったふうな厭味ったらしい声が響く。それは死刑宣告のつもりだったのだろうが、大統領の脳裏には希望の暖かい光りが差した。
 私にはマイク・バニングがいる。
 その後の記憶はあまりない。目が覚め、ふと見ると自分の手を無骨な手で握りながら息子を膝に載せ、ベッドの隣のソファで眠っているマイクがいた。
 カウンセリングなんかよりよほど効くな、と思わず大統領ーーベンは微笑んだ。
「…ん、起きたか、ベン。眠れたか?」
「ああ」
 微笑みながら自分の目を握られた手に向けると、慌てたようにマイクはその手を離した。
「すまない、魘されていたから」
「いや、有難かったよ。本当に」
 友人同士が交わす視線よりは少し熱を孕んだ、おかしな空気で見つめ合っていると、マイクの膝に乗せたコナーが唸るような小さな声を上げた。
 コナーを隣の部屋に運んで行ったマイクはスコッチを手に戻ってきた。暫く無言で酒を酌み交わす。
「……マイク、君は悪夢を見ないのか?傷が疼く事は?」
「ああ、今回の騒動のでは無いな。なにしろアンタを守れたし、傷は俺の勲章だ」
 毅然と言い放つマイクにベンは憧憬を感じた。
「私は君に守られていただけだからな……」
「ベン、傷を見せてみろ」
「なんだって?」
「俺のも見せるから。フェアだろ?」
 酔いのせいか、マイクの謎理論に笑いながら乗ってやり、二人はシャツを脱いだ。
「君の……その新しい傷は全て私のせいなのか……」
 ゆっくりとマイクの傷をなぞる。
「いいや、ミスター・プレジデント。コイツはあのクソったれテロリストのせいさ。だが、アンタの為の傷だと思えば俺の原動力になる」
 マイクが信じられないほど優しい顔で続ける。
「そして、アンタのこの銃創。これのおかげで俺は今生きてるし、ケルベロスも止められた」
 怪訝な顔をしていた私の銃創をマイクが撫ぜて言う。
「アンタが撃たれながらも戦ってたから、奴に隙ができて俺は奴をぶち殺せた。これは、アンタが俺を救って、アメリカを守った勲章だよ」
 マイクはそう言って私の傷痕に口付けた。それは、今まで感じたことの無いほどに甘く腰に響いた。
「君は思ったよりロマンチストだな」
 動揺を悟られないように笑っていう。
「そうさ、大統領閣下。知らなかったのか?」
 
 その後は、なにが面白いのか、二人でティーンの様にくすくす笑いながらシーツに包まって眠った。事件以来最高の睡眠だった。
ーーーーーーーーーーーーーー
「……マイク?」
「お早う、sir。食事は持ってこさせたぜ」
 当然のように言うマイクは腰にシーツを巻きつけただけの姿だった。
「まさか、君、その格好で?」
「?ああ」
 とんでもない噂がハウスに流れる様子を想像して頭を抱えた。しかし、朝日に照らされたマイクはまるで彫刻のように美しく、こんなゴージャスな男と噂になるのも面白いかもな、と笑ってしまった。
「勿論食べさせてくれるんだろう?ナイト様」
「仰せのままに、Your Majesty!」 



拍手[21回]

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